ヘリポート保有数に関する調査によると、アメリカが8,130か所で世界最多を記録している。日本は3,036か所で2位に位置し、航空インフラの整備が進んでいることを示している。続いてEU、ブラジル、韓国が上位5か国に含まれ、ヘリポートの分布が特定の国に集中している現状が明らかになった。
ヘリポートとは、ヘリコプターが離着陸するために設計された特定の場所や施設を指す。地上、建物の屋上、または船舶上に設置され、緊急医療、災害救助、人員輸送など多岐にわたる目的で利用される航空インフラの重要な要素である。
ヘリポート大国アメリカの背景
アメリカが8,130か所という圧倒的な数のヘリポートを保有している背景には、その広大な国土と多様な地理的条件がある。ロッキー山脈のような山岳地帯から広大な砂漠、そしてニューヨークやロサンゼルスのような超巨大都市まで、多様な環境がヘリコプターの利用価値を高めている。地上交通網が届きにくい遠隔地へのアクセス手段として、また、渋滞が深刻な都市部での迅速な移動手段として、ヘリコプターは不可欠な存在である。さらに、アメリカでは民間航空文化が深く根付いており、企業幹部の移動、報道機関の取材、観光、さらには個人の趣味に至るまで、ヘリコプターの活用範囲は非常に広い。救急医療サービス(EMS)や警察、消防といった公的機関による利用も活発で、人命救助や治安維持の最前線でヘリコプターが重要な役割を担っている。こうした民間と公共の両面における高い需要が、世界最多のヘリポート網を支える基盤となっている。
日本が2位である理由と国内事情
日本がアメリカに次いで世界第2位のヘリポート保有国である主な理由は、その国土の地理的特性と、世界でも有数の災害多発国であるという点にある。国土の約7割を山地が占め、数多くの離島を抱える日本では、地上交通だけでは迅速な移動や物資輸送が困難な地域が少なくない。特に、地震、津波、台風といった自然災害が頻発するため、災害発生時の救助活動、負傷者の搬送、孤立地域への物資輸送において、ヘリコプターは生命線ともいえる役割を果たす。全国に整備されたヘリポートは、こうした緊急事態に備えるための重要な防災インフラである。また、東京や大阪のような人口が密集する大都市では、高層ビルの屋上に設置されたヘリポートが、救急搬送や企業の事業継続計画(BCP)の一環として活用されている。自衛隊や警察、海上保安庁といった公的機関も、防衛、警備、海難救助などの任務でヘリコプターを多用しており、その運用を支えるために全国各地にヘリポートが戦略的に配置されている。
上位国の共通点とインフラの重要性
ヘリポート保有数で上位にランクインする国々には、いくつかの共通点が見られる。第一に、アメリカ、日本、EU諸国といった経済的に豊かな国が名を連ねており、高度な航空インフラを整備・維持するための経済力が基盤となっていることがわかる。第二に、アメリカやブラジルのような広大な国土を持つ国や、日本のように山がちで離島が多い国など、地理的な条件がヘリコプターの必要性を高めているケースが多い。第三に、公共の安全に対する意識の高さも重要な要素である。災害対応や救急医療体制の整備に力を入れている国ほど、ヘリポート網が充実している傾向がある。ブラジルの場合、広大な国土に加えて、サンパウロのような大都市での深刻な交通渋滞がビジネス目的のヘリコプター利用を促進し、世界有数のヘリコプター都市を形成している。このように、ヘリポートの数は、単に国の豊かさだけでなく、地理、防災、経済活動といった多様な要因が複雑に絡み合って決定される、社会の成熟度を測る指標の一つと見ることもできる。
アジア諸国の台頭と今後の展望
ランキング全体を見ると、韓国(5位)、フィリピン(10位)、中国(22位)など、アジア諸国の存在感が増していることが注目される。これらの国々では、急速な経済成長に伴い、より高速で効率的な移動手段への需要が高まっている。特に、交通渋滞が深刻化する巨大都市では、ビジネスや救急医療の分野でヘリコプターの活用が広がりつつある。将来的には、「空飛ぶクルマ」とも呼ばれる都市航空交通(UAM)の実用化が見込まれており、既存のヘリポートは、次世代の航空モビリティを受け入れるための重要な基盤となる可能性がある。UAMが普及すれば、人やモノの移動が3次元的に拡大し、都市のあり方そのものを変革する可能性がある。ヘリポート、あるいは未来の「バーティポート(垂直離着陸場)」の整備は、アジアの成長を牽引する国々にとって、国際競争力を維持し、持続可能な都市を構築するための重要な課題となるだろう。
重要ポイント
ヘリポート保有数の地理的集中
- アメリカが8,130か所と、他国を大きく引き離して世界一の保有数を誇る。
- 日本は3,036か所で2位にランクインし、国土の特性と防災意識の高さが背景にある。
- 上位5か国(アメリカ、日本、EU、ブラジル、韓国)で全体の半数近くを占め、インフラ整備が特定の国に偏っている。
経済と安全保障におけるヘリポートの役割
- ヘリポートの数は、国の経済力や地理的条件と密接に関連している。
- 緊急医療サービス(EMS)や災害対応において、ヘリポートは迅速なアクセスを可能にする不可欠なインフラである。
- 企業活動や資源開発でもヘリコプターは重要な役割を果たし、ヘリポートの整備が産業競争力を支えている。
上位ランキング
1位 アメリカ 8,130
アメリカが保有するヘリポート数は8,130か所に上り、世界で圧倒的な首位を誇る。この背景には、広大な国土と多様な地理的条件がある。地上交通ではアクセスが困難な山岳地帯や遠隔地への移動、そして大都市での交通渋滞を回避する手段として、ヘリコプターは欠かせない。また、救急医療、警察、消防などの公的機関による利用はもちろん、企業活動や報道、観光、個人のプライベートジェットならぬプライベートヘリの利用など、民間での活用が非常に活発である。この官民双方における高い需要が、世界一のヘリポート網を形成する原動力となっている。
2位 日本 3,036
日本は3,036か所のヘリポートを保有し、世界第2位に位置する。国土の約7割が山地であり、多くの離島を抱える地理的条件から、ヘリコプターは重要な交通・輸送手段である。特に、地震や台風などの自然災害が頻発するため、災害時の救助活動、緊急搬送、物資輸送におけるヘリコプターの役割は極めて大きい。全国に整備されたヘリポートは、国の防災インフラの根幹をなす。また、大都市の高層ビル屋上に設置されたヘリポートは、ビジネス利用や緊急時の避難場所としても機能しており、日本の国土事情と安全保障意識の高さがこの順位に反映されている。
3位 EU 2,069
EU全体で2,069か所のヘリポートがあり、これは加盟国全体の合計値である。ヨーロッパの先進国では、国境を越えたビジネス活動が活発であり、迅速な移動手段としてヘリコプターが重宝される。また、ドイツのドクターヘリに代表されるように、高度な救急医療体制が整備されており、その運用には緻密なヘリポート網が不可欠である。アルプス山脈周辺では、山岳救助や観光目的での利用も多い。EUの数値は、個々の国の経済力と、地域全体で連携する高度な社会システムを象徴しているといえる。
4位 ブラジル 1,871
ブラジルは1,871か所のヘリポートを保有し、世界4位のヘリポート大国である。広大な国土にはアマゾン熱帯雨林など、陸路でのアクセスが極めて困難な地域が広がっており、資源探査やコミュニティ間の連絡にヘリコプターが不可欠である。また、沖合の石油プラットフォームへの人員・物資輸送もヘリコプターの重要な役割だ。特筆すべきは、サンパウロのような大都市での利用で、深刻な交通渋滞を避けるため、富裕層や企業幹部の移動手段としてヘリコプターが日常的に使われており、世界有数のヘリコプター都市として知られている。
5位 韓国 1,280
韓国は1,280か所のヘリポートを保有し、トップ5にランクインしている。国土は山がちで、ソウル首都圏に人口が集中しているため、都市部での迅速な移動手段としてヘリコプターの需要が高い。特に、スピードを重視するビジネス文化が、企業によるヘリコプター利用を後押ししている。また、救急医療体制の整備も進んでいる。さらに、朝鮮半島という地政学的な状況から、軍事および国家安全保障上の理由でヘリコプターとそれを支えるインフラが重要視されており、公的機関による利用が全体の数を押し上げる一因となっている。
| 順位 | 名前 | 指標 |
|---|---|---|
第1位 | 8,130 | |
第2位 | 3,036 | |
第3位 | 2,069 | |
第4位 | 1,871 | |
第5位 | 1,280 | |
第6位 | 506 | |
第7位 | 494 | |
第8位 | 488 | |
第9位 | 449 | |
第10位 | 416 | |
第11位 | 405 | |
第12位 | 392 | |
第13位 | 289 | |
第14位 | 240 | |
第15位 | 204 | |
第16位 | 194 | |
第17位 | 163 | |
第18位 | 162 | |
第19位 | 148 | |
第20位 | 142 |





