世界の鉄道総延長ランキング：最も広大な鉄道網を持つ国は？アメリカ、中国を抑えた1位を解説

重要ポイント

鉄道大国の特徴

• EUは加盟国の合計で圧倒的な1位であり、ヨーロッパ全体の緊密な連携を示している。
• アメリカ、中国、ロシアといった広大な国土を持つ国が、国別ランキングの上位を独占している。
• これらの国々では、主に資源輸送や大陸横断物流といった貨物輸送が鉄道網発展の原動力となってきた。

経済と鉄道の密接な関係

• 鉄道網の規模は、その国の経済力や産業活動と強い相関関係がある。
• インドのように、鉄道が国民の主要な移動手段であり、生活に不可欠なインフラとなっている国もある。
• 中国の急速な鉄道網拡大は、同国の経済成長戦略と密接に連携した国家プロジェクトの結果である。

日本の鉄道の位置づけ

• 日本の鉄道総延長は世界12位だが、国土面積に対する密度は世界トップクラスである。
• 貨物中心の他国とは異なり、高頻度・高密度の旅客輸送に特化して発展してきた点が特徴だ。
• 新幹線に代表される高度な技術力は、日本の鉄道が世界から高く評価される要因となっている。

上位ランキング

1位 EU 4,894,173km

EU（欧州連合）は、個別の国ではなく27の加盟国の鉄道網を合算した数値であり、世界で最も広大な鉄道ネットワークを形成している。歴史的に各国で発展してきた鉄道が、現在では国境を越えて人や物を輸送する巨大なインフラとして機能している。特に、欧州の主要都市を結ぶ高速鉄道網（ユーロスター、TGV、ICEなど）は、航空機と競合するほどの利便性を誇り、欧州統合の象C象徴ともいえる存在である。貨物輸送においても、環境負荷の低い鉄道へのモーダルシフトが推進されており、その重要性はますます高まっている。

2位 アメリカ 293,564km

アメリカは、国別で見ると世界最大の鉄道大国である。その広大な国土を網の目のように結ぶ鉄道網は、主に貨物輸送のために発展してきた歴史を持つ。コンテナ、石炭、穀物、自動車など、あらゆる物資が大陸を横断する長大な貨物列車によって輸送されており、アメリカ経済の動脈として不可欠な役割を果たしている。旅客輸送は、一部の都市間を結ぶアムトラックなどが運行されているが、その規模は貨物輸送に比べて限定的である。この「貨物主体」という点が、アメリカの鉄道の最大の特徴といえる。

3位 中国 150,000km

中国の鉄道網は、近年の目覚ましい経済成長を背景に、世界で最も急速に拡大している。特に、2008年の北京オリンピックを契機に本格的に建設が始まった高速鉄道網は、わずか十数年で総延長が世界一となり、国内の主要都市を高速で結んでいる。在来線においても、資源開発や内陸部の経済発展を目的とした新線の建設が積極的に進められている。鉄道インフラの整備は、広大な国土を持つ中国にとって、経済格差の是正や国家の統一性を維持するための重要な国家戦略と位置づけられている。

4位 ロシア 85,494km

ロシアの鉄道網は、世界で最も長い単一路線であるシベリア鉄道を擁するなど、その広大な国土を反映した大陸的なスケールを特徴とする。ウラル山脈を越えてヨーロッパとアジアを結ぶこの鉄道は、沿線地域の開発や資源輸送において決定的な役割を果たしてきた。現在も、ロシアの物流の根幹を担っており、特にコンテナ輸送によるアジア・欧州間の陸上ブリッジとしての重要性が増している。厳しい気候条件下で鉄道を維持・運行するための高度な技術も、ロシアの鉄道の特徴の一つである。

5位 インド 65,554km

インドの鉄道は、14億人を超える国民の生活を支える最も重要な交通インフラである。「インド国鉄」によって運営される鉄道網は、毎日数千万人もの人々を運び、「国民の足」として深く浸透している。安価な運賃で長距離を移動できるため、多くの国民にとってなくてはならない存在だ。また、石炭やセメント、食料品といった基幹物資の輸送も担っており、インド経済の生命線ともいえる。現在、高速鉄道の建設計画も進められており、今後のさらなる近代化が期待されている。

12位 日本 27,311km

日本の鉄道総延長は世界12位だが、その内容は他国と大きく異なる。最大の特徴は、世界で最も高密度かつ高頻度に運行される旅客輸送システムであることだ。特に大都市圏では、数分間隔で正確に運行される通勤・通学路線が社会経済活動の基盤を形成している。また、新幹線は高速性、安全性、定時性のすべてにおいて世界最高水準を誇り、日本の技術力の象徴となっている。貨物輸送の割合が低い一方で、旅客輸送の質と効率性を極限まで追求した点が、日本の鉄道の世界におけるユニークな立ち位置を確立している。